人と被りたくないからといって、髪飾りではないものを無理やり付けることが必ずしも正解とは限らない

最近の成人式や卒業式では、ヘアセットそのものの難易度よりも、髪飾りを付けることの方に時間を要することが多くなっています。

当店でも当初通常のヘアセットはよほど特殊なものでない限りは全て一律の料金でしたが、現在は髪飾りを五個以上付けるなど時間を要する場合にはオプションとして別料金を頂いています。

つまり別料金を設定しなければならないほど、髪飾りを付けることが複雑になっている状況だということです。

元々髪飾りとして機能するものであれば良いのですが、髪飾りではない用途のものを無理やり付けてもろくなことがありません。

だいたいそういう要望のある方が口を揃えて言うのが、『人と被りたくない』ということです。

人と被りたくないからといって極端なことをしても、別の意味で目立つだけで、途中で崩れたりずっと気にしていなければならなかったりして、ただ疲れるだけだったりします。

ハリガネを髪に付けようとした、あるお客様

以前にホームセンターで買ったコイル状の太いハリガネを持って来た方がいらっしゃいましたが、これを一本に結んだ髪の毛の周りに浮かせてくるくるさせたいというご希望でした。

まず安定しないどころか、工具用のハリガネですから固く簡単に動かせませんし、ペンチなどを使わない限り手動では形も作れません。

一体何屋なのか分からない作業になり、バランスとしても不自然であり、何より長時間過ごすのには向かないものでした。

インスタではモードっぽく素敵に見えたとしても、作品として魅力的なものはきちんとトータルバランスを計算しており、部分的に似せても無理があり、現実的ではありません。

正直そのようなものを参考にしたところで土台が違いますし、極端に個性的なスタイルは実際やるとまずうまくいかないことの方が多いです。

大切な日に、わざわざ崩れたり自分自身が疲れてしまうような髪型にする必要ってあるのでしょうか?

それにハリガネのような決して安全とは言えないような物を髪に付けて万が一お着物に引っかかってしまった場合、最悪の場合せっかくの大切なお着物を傷付けてしまう可能性もあります。

そんなリスクのあることを、わざわざ追加料金を支払ってまで強行突破するメリットがない為、正直にご説明させて頂きました。

もちろん頭ごなしに否定するのではなく、実際に持参されたハリガネを髪に付けて実演して丁寧にご説明しました。

斬新なスタイルを希望する場合は、その施術の現実性や注意点も把握しておく必要があります。

その場だけ短時間過ごすのなら見映えを優先しても良いですが、よくよく聞いてみるとお客様にはそれぞれ事情があります。このお客様の場合は人様から借りた着物でしたから、なおさら気を付けなければなりません。

その後こちらのお客様には、人となかなか被らない髪型でなおかつ崩れにくいヘアセットをご提案し、結果的にとても喜んでお出かけになりました。

特別な日に特別な髪型にしたいというお気持ちは本当によく分かりますし尊重したいのですが、それ以上にお客様にとってのデメリットの方が大きい場合には、当店では正直にお伝えしています。

その上で、お客様が心から良かったと思えるような方法を選択して貰えるように、誠心誠意努めさせて頂きます。

 

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