かつて私は美容部員を経て、フリーランスのヘアメイクとして活動していました。撮影現場、ヘアセットサロン、一般美容室、ヘアメイク講師…さまざまな現場を渡り歩き、20代の頃は「いい仕事がしたい」「もっと技術を上げたい」──そんな思いだけで突っ走っていました。
ところが長年の無理が祟り、身体を壊したのをきっかけに、働き方を根本から見直さざるを得なくなったのです。
遠方への移動、重いキャリーを引いての現場、昼夜逆転の生活…。若い頃には気にならなかったことが、年齢とともに限界を感じるようになりました。
「もう細々でもいい。一人で、無理なく、自分の城を持ちたい」
そんな思いから、アパートでのサロン開業を考えるようになりました。
でも現実は甘くありません。ヘアメイクという業種は、不特定多数が出入りするため、一般の住居用アパートやマンションでは賃貸を断られることが多いのです。
正直、私も半ば諦めかけていました。そんなとき、友人の紹介で「サロン営業OK」という物件に出会い、今の場所を見つけたのです。
場所は、各駅停車しか停まらない郊外の住宅地。普通の住居用アパートの一室です。規模で言えば、ほとんど自宅サロンのようなもの。
最初は、都市部での経験をそのまま持ち込めばいけると思っていました。短時間で安く、可愛く仕上げればお客様に喜んでもらえる──そう簡単に考えていたのです。
しかし、現実は全く違いました。
都市部と住宅街では、客層もニーズも全然違う。安易に「人はいるから集まるだろう」と思っていた自分は、経営に関して無頓着すぎたのです。
開業してからというもの、うまくいかないことだらけ。悔しさや焦りもありましたが、その試行錯誤の中で、私はようやく自分に合ったやり方を見つけていくことになります。
諦めるべきこと
割り切るべきこと
逆に取りに行っていいこと
自分にできること・できないこと
ヘアメイクとしての技術だけではなく、経営者としてどう在るべきか──それを必死で考え続けた日々でした。
ヘアメイクとしての技術だけではなく、経営者としてどう在るべきか──それを必死で考え続けた日々でした。
今は、無理せず一人で、自分のペースでお客様を迎えられる形をようやく築きつつあります。
ただ、ここで一つ、大きな壁にぶつかりました。
それが 「ヘアセット」という商材の難しさ です。
次の記事では、私が住宅街でヘアメイクサロンを続ける中で痛感した、ヘアセットという商材の特殊さ、そして集客や経営を難しくしている根本的な理由についてお話ししようと思います。

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